時をかける少女

(点線以下、追記しました)
なんだ、こんなところに、こんないい作品があるじゃないか。
鑑賞後、暫く呆然としてしまい、その後ゆっくりとそう思いました。
普通に良作です。名作・傑作というよりは良作。
そして、「普通に良作」であるということはとても難しいことだとも思いますから、
やっぱりこの映画は凄い。
昨日、1日に観に行って来ました。
映画の日という事もあってか、立ち見まで出ているほどの盛況ぶり。
私ももう少しで立ち見組に入っちゃうところでした。
30分以上前に会場に行ったんですけどね。
また観客がアニメーション映画にも関わらず、幅広い年齢層。
あ、子供はいなかったかな。でも結構なおじさん達もいらっしゃいました。

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多分大林宣彦監督版の「時かけ」を観た世代の方たちじゃないかな、
なんだか久し振りに会う友達を待ってるみたいな、奇妙にそわそわした、
それでいてどこか嬉しそうな印象を受けましたね。
開始直前にはやはり背後に立ち見の人がいっぱい。
私はギリギリだった事もあって前から二列目になってしまいました。
スクリーンに近い所為もあって、始めは細かい背景の割に
雑とも言える人物の線に驚きました。
けれど見ているうちにその線も「味」に思えてきて、
声優陣も、やや棒台詞が聞こえてきたりすることももありましたが、
感情の起伏が激しい部分に来てからは役者さんが全力投球しているせいか、
とても感情移入出来ました。
(かえって、「普通」の状態を演じるほうが難しいんですよね。
 ストレートプレイよりは絶対にオーバーアクションしなきゃいけないですけど、
 それは怒鳴ったり、大声を張ることとは違いますし)
観ている間、始めは腰痛が酷い事もあって座席に全身を預け気味に観ていたのが、
徐々に身体を起こしていて、終わる頃にはやや前のめりにさえなっていました。
タイムリープそのものに関しては疑問が生じる部分がいくつかあったものの、
SFの、「少し不思議」という具合にぴったりの、物語の中の材料としては、
相当上手い味付けだったように思います。
タイムリープそのものが主題ではなく、主人公達を動かすための手段として使っていたので、
「真琴が引き起こすタイムリープでの変化」を見せられている感が無く、
あくまでも「タイムリープで一喜一憂する真琴」を見ていられました。
真琴の一喜一憂にはこちらまで引き摺る勢いがあって、
彼女が屋上で大泣きするシーンには、思わずつられて涙が。
笑えて、泣けて、少し切ないけれど、決して後味が悪くない。
涙は出ても泣かされたという感じじゃなく、真琴に同調して涙が出たというか。
ただただ精一杯の主人公たちの思いに引き摺られて感情が動きました。
これも、感動なんですよね。


ごく普遍的な内容で、且つ等身大の人間を(アニメ的な技法を用いつつ)描いているこの作品は、
強烈なメッセージや壮大な世界観、深い感動というものを殊更に主張せず、
また含んですらいなかったりします。
でも、日常と言うものも見方一つで変わるのであって、何度も出てきた学校の描写には、
私のような高校を卒業して久しい人間は懐かしさで満たされますし、
今学生の子達にはよりリアルに真琴たちの存在を感じる事が出来るんじゃないでしょうか。
真琴たちの一喜一憂は、数ある英雄譚の勇者たちの苦難に勝るものではないけれど、
私たちにはリアルで、感情移入し易いものです。身近なものです。
この共感こそがこの映画最大の醍醐味であり、
この作品を普遍的な「良い映画」たるものにしているのではないかと思います。
二代目、二作目はとかくけちをつけられ易いものですけれど、これは一つの作品として、
時をかける少女」の新たなる一面を見せ、また新風を吹き込んだと思います。
素晴らしく見事な換骨奪胎でしたね。
監督が原作を愛していらっしゃるのが良く分かりました。
本当にいい映画を見ました。元気を貰いました。
面白かったー!と興奮したりとか、凄く悶々と頭の中で物語を捏ね繰り回しながら
劇場を後にした事は多々あれど、主人公たちに「またね」って、
ぽんと背中を押されて劇場を出たような感覚になったのは初めてでした。
結構切ない話なのに、主人公たちの明るさに救われます。
所々で印象的に使われていた青空そのままに、澄んだ感性の映画でした。
じわじわとまた観たくなってきたので、また観に行ってしまうかも。
一回目見逃した部分を、もっとちゃんと観てみたい。
あと主題歌、歌詞が相当良かったのに、映画の内容に圧倒されて、
頭半分で聞いていたのが勿体無くて。
TEPCOひかりのCMソング歌ってる人ですよね?声が独特なのでピンと来たのですが。
もっかいちゃんと聞きたい。観たい。
うん、この夏の間にもう一度は観ておきたいです。