ゲド戦記

(下に感想追記しました)
日曜のレイトショーで見てきました。
噂に寸分違わず、結構な駄作でした。
あ、ものっすごい酷評ですので、あとネタバレも考慮しません。
もはや感想というよりは原作オタの逆巻く怒りをぶっつけたようなものになるので、
そこら辺りも了承の上で読んで下さい。






前評判を聞いていた時から、嫌な予感はしていたんですが、
見ないで評するような馬鹿な真似はしたくないので、
きっちりこの目に納めた上で、あえて文句を言わせてもらいます。
奈良のグランマ・miyocoの勢いで「どぉ〜なってんの!!?」と叫びたいです。
私の愛するゲド戦記を汚さないで下さい。
ていうかこんな駄作作るなんてお金と時間と労働力の無駄遣いもいいところです。
やるなら監督の脳内だけでやって欲しかったですよ。
父親の作り上げる世界観の、100分の1にも満たない自己満足世界。
原作の、素敵な登場人物達、素晴らしい言葉、心打つ物語、広大な世界。
その内の何一つ、表現できていませんでした。
元々5冊の所を3冊目の「さいはての島へ」をベースに、
他の巻もごちゃまぜにしたのだから時間がないのは分かります。
しかし、これはもう完全な別物過ぎて、「ゲド戦記」なんて名付けて欲しくない。
ハイタカがどれだけの旅を、時間を過ごしてあの境地に立ったのかとか、
テナーの過去や、アレンが自分の闇に付きまとわれる原因となったこと、
全てが説明不足過ぎて、またテルーの扱いも都合が良過ぎて、
訳の分からぬ勧善懲悪もの(ともちと違うか)になってしまっていました。
アチュアンの墓所とか言われたって、原作読んでる人にしかそこがどんな所なのか分からないし、
大体墓所なんて聞いて彼女が墓守りの巫女だったなんて殆ど誰も想像つきませんよ。
しかも仮の名前と真の名前を使い分けてる理由も、
冒頭で一応説明されているとはいえあれじゃ短か過ぎて、不親切にも程がある。
ハイタカとアレンが旅をしている部分をカットしてでも描く所はもっとあったように思います。
監督が何もかも自分が分かってるからって前提条件を忘れて話を作り過ぎ。
劇場見に行っている人の大半はジブリオタだったり、普通の映画好きの人で、
悲しいながら私にとっては大の名作であるこの作品も、
読んでいる人なんてそんなに沢山いませんよ。(比率として考えるとね)
そう考えるともっと丁寧に話を作る必要があるし、無駄な描写は一切省くべきでしょう。
時間の使い方も下手だし、人に話を組み立てて説明するのも下手なんですかね?
ていうか!! 原作あるのに原案:シュナの旅ってのはなんなのよ!!(怒)
父万歳したいんならむしろそのまま大人しくシュナの旅作っとけ!!
そうしたら少なくとも他人の作品じゃないから泥つけたって身内被害だけで済んだよ!!!
あーホントもうお金と労働力の無駄遣いですよ。
背景美術や音楽が良いだけに余計に涙が出てきそうです。
映画終わった後、腹立たしさと悲しさとで泣きたくなったなんて、初めてかも。
それほど原作は素晴らしいんですよ!
こんなクソ映画の原作とか言いたくない程に!!!
もうシナリオの酷さについては語るとキリがないのでやめときますが、
少なくともこの作品はジブリ作品名乗らせない方が良いと思います。
えと、声。というか演技。
えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーと。
……もういい加減声優使いませんか。余りの酷さに耳塞ぎたくなります。
特に今回素晴らしい棒台詞を吐いて下さったのは手嶌葵さん。
彼女、歌だけ歌わせときゃ良かったのに。
演技で評価が大減点ですよ。
CM見た時にあーこんな普通の顔して声出してりゃダメだなとは思ったんですが。
(表情筋変えずに声色だけ変えるなんて超一流の声優さんですらなかなか出来ません。
 電話口で電話の向こうの相手騙すのとは訳が違います。
 通常の3〜4倍近いテンションで喋らないと絵に声が乗っからないんだってば)
「大っ嫌いだ」と言ってるくせに顔が「嫌い」の表情になってないのよ。問題外。
なんか声だけ出しときゃいいって思ってないか。演技して下さいよ演技。
もうあんだけ酷いならいっそ字幕でも良いよ。
唯一まともと言えたのがハイタカ(ゲド)役の菅原文太さんですかね。
他の人は『まぁ聞けないこともない』という程度でしか評価できません。
岡田君、普通の芝居は好きですけど、やっぱり映像と声当てじゃ勝手が違い過ぎるんですね。
下手下手下手!!っていう程でもないけど……やっぱなぁ、遜色無いとは言い難い。
でもいつも思うんですけど、映画って「ベスト」を揃えるもんじゃないの?
もう良くて「ベター」なのは、うんざりです。観客馬鹿にしてるのかと思います。
あの美しい背景美術と、音楽の他に褒める所は一片たりとてありません。
主題歌と挿入歌、それぞれ作曲が新居昭乃さんに谷山浩子さんと私の好みだったので、
そこに関しては何の文句もありません。
ただ、こんな映画に使われて勿体無い、という気はしましたけれども。
それをいうなら背景もですね。
あの美しい背景を前になんと話の薄っぺらいことか。
映画の時間全てを費やしても、原作のゲドの私が愛する台詞一つにかないません。
単なる説教くさい内容になるかと思いきや、その説教すらも臭いと言える範囲にも届かず。
何もかも薄かった。兎に角原作ファンとしては腸が煮え繰りかえる思いです。
アーシュラ・K・ル=グウィンに謝れ。そう言いたいです。