父帰る/屋上の狂人

もう見れないかと諦めかけてましたが最後三日程粘って良かった!
木曜、金曜とキャンセル待ちのキャンセル待ちという、多分無理だろな−ってとこで
並んでたんですがやはり両日とも無理で。
でも運良く土曜のキャンセル待ちの予約が取れたので、それでなんとか入れました。
今回は当日券とキャンセル待ちの予約を、前日に電話して取らなきゃいけなかったのです。
予約が取れなければ、上記の通りキャンセル待ちのキャンセル待ちをしなきゃいけないという……。
しかも、普通にキャンセル待ちでも入れない事もあるわけで。
(だから予約取れてても金曜並んだんです)
でも驚いた事になんとキャンセル待ち予約番号、一番最後だったらしく。凄く運が良かったです。
会社午前半休取ってまで電話掛けた甲斐があったというものです。
会場はやはり主演の草なぎ剛さんファンが多いのか、9割方女性。
男性が単独で来られている姿はあまり見なかったですね。
前にも、確か演目がフォーティンブラスで、ジャニーズの人が主演を務めていらっしゃった芝居を
観に行った事があるのですが、その時にもその女性率の高さに驚いたのを思い出しました。
いやーしかし結構年齢層広いんですね、草なぎさんのファンって。
それこそ中高生くらいから、多分60くらいの方まで頬を染めて草なぎさんを語っていらっしゃった。
……年を重ねても、やっぱりハマれるものは作った方がいいな、と結論付けました。
ええと肝心の中身の感想を。
父帰る
長らく家を空けていた父が、ふらりと家に戻って来る話。話としてはあんまり好みじゃないです。
確かに人情劇としてほろりとさせられる部分もありますが、この話は父親が「一家の大黒柱」
であった時代こそ通用する話で、現在でも共感出来る人もいるのでしょうけど、
私は女の立場から言わせてもらえば、幼い子供三人を残しふらりと家を出ていった父が、
年老いて郷愁の念に駆られて帰って来ても叩き出しますよ、多分。
話としては良い感じに終わってますけど、男のエゴにも程があると思うもの。
特に家を去る時の未練がましく尚且つ恨みがましい台詞。
「うぜぇ」の一言で斬って捨てたくなります。
まぁそれで済まないのが家族、ってものなんだって事でしょうけど。
でもなぁ、実際離婚騒動とか越えたら、相当どうでも良くなりますよ。
一人の父である前に一人の人間であるって事は分かってても、許せる事と許せない事あるでしょう。
草なぎさん演ずる賢一郎が家長代理として、母を支えた息子として、弟妹の兄として、
そして父の子として怒り出すのは当然で、また父の帰宅を素直に喜ぶ事が出来ない葛藤とか、
でも本当は信じられないぐらい嬉しい事とかもなんとなく分かります。
でも嬉しいと感じるのは他ならぬ「それまで父が居なかったから」であって、
本来ならそんな事に喜びを見い出す事はないのですよね。ってそんな事言っちゃあお終いか。
どちらにせよ、私はあのエンディングを「めでたしめでたし」と見る事は出来ませんでした。
素直に感動出来なくてごめんなさい。父親に恨みを持つ娘としては心中複雑なんです。
役者に関して。草なぎさんはテレビで見るよりずっと落ち着いた深い声で驚きました。凄く良い声。
役柄的に声のトーンを低くした部分もあるのかも知れないけれど、低いのに良く響いて、
質のいいテノールって感じ。低いと感じたけどそれでもやっぱりテノールの高さですね(笑)
ただ、台詞はもしかして香川弁に集中し過ぎなのか、どうも相手にかかってない感じ。
ちょっと大きめの独り言に聞こえる事が多かったです。
勝地くんは初っ端やたら間延びした台詞が多くて、のんびりした感じの役柄なのか、
それとも台詞に色をつけようとして間延びしてるのか判別尽きませんでした。
袴脱ぎながら喋ってる辺りはちょっと酷かったかなぁ;
「……なんだよ〜」とか「……だなぁ〜」みたいな。
たまに使う分には良いけれど、多用するとちょっと間抜けっぽく見えちゃいます;
途中からピッと空気の切れそうな感じの良い芝居に変わりましたけど、
それはやっぱり父の存在を匂わせた辺りからでした。
妹の「外に誰か居た」という発言に玄関に駆け出す弟、
賢一郎の「どうや、おるか」の声に返す新二郎の「いいや、(誰も?)おらん」の台詞。
賢一郎の台詞が出てから、答えるまでの間といい、声の張り詰め具合といい、最高に良かった!!
あの二人の掛け合いのシーンが一番場に緊張が生まれた瞬間だと思います。
その後の父が、賢一郎を一喝したりするシーンよりも、張り詰めた空気が漂っていました。
一番演技が自然だと感じたのは母役の梅沢昌代さん。方言の違和感の無さが素晴らしい。
沢竜二さんのいじけた父は、年老いた男としては確かに「あーいるいるこういう人」って感じでした。
ごめんなさい、妹さんあまり記憶に残って無いです。
「屋上の狂人」
屋根に上るのが大好きな知的障害者の息子を持つ父が、なんとかそれを治そうと、
怪しげな巫女さんを呼んだ事でてんやわんやの大騒ぎになる喜劇。
草なぎさんが兎に角イキイキしてました(笑)
その主役の知的障害者の役なのですが、もう好き放題やってるとしか。
でもその分、演技は延び延びとしていましたし、前半よりもずっと台詞がすっと入って来ました。
悪い足場をものともせず、結構自由に動いてましたし、台詞が無くても存在感がありましたね。
続いても父親役の沢さんですが、こっちは喜劇という事もあって、父親も相当お茶目でした。
押してばかりかと思いつつ、すっと引いた台詞で場内を涌かせたりで、
兎に角台詞遣いが巧みですねー。凄いなぁ。
巫女さん役のキムラ緑子さん。キャラ作りが強烈でした。面白過ぎる。
倒れ方とか、いちいち『らしい』演技で笑いました。草なぎさんとの掛け合いは面白かったです。
巫女さん連れて来る、隣人役の高橋克実さんも凄い台詞とか少ないのに良い役所でしたね。
ていうか存在感が凄かったです。出て来てパっと分かるもの。
勝地くん。良い役貰ったねぇ。うん、凄い美味しかったです。
最後良いトコ独り占め……とまではいかないけれど、兄との和やかな会話を交わす、
真面目で穏やかで素直な弟像は、最後の締めでとても爽やかな印象を与えてくれますよね。
でもその直前の巫女さんに対するツッコミの数々も素晴らしいよね。
皆が頭下げてた人真っ向から全否定(笑)
かっちもこっちの方が伸びやかに演技してましたね。楽しそうでした。
二本立てで、屋上の狂人を後に持って来たのは正解だと思います。
とても後に残る余韻が良かったので。
うん、久し振りに観ましたが面白かったです。
一時間だったから立ち見でもそれほど疲れずに済みました(苦笑)