死して咲く花、実のある夢

死して咲く花、実のある夢 (ハヤカワ文庫JA)

死して咲く花、実のある夢 (ハヤカワ文庫JA)

自分が理系の話が苦手である事がこれほど疎ましく思えたのは初めてです(爽)
細々とした部分まで理解するために辞書とネット環境を常備しないと読めなかった……です。
理系脳が欲しいよ……_| ̄|○
それともあれですか、SF読み慣れたら大丈夫になりますか。
基本的に意味が分からないところをそのままに読み進める事が出来ないタチなんですよ。
ですので多分今まで読んだ本の中で一番時間掛かりました。
あーでも面白かったです。最後はちょこっと泣かされました。
途中から降旗さんと知念さんの会話が禅問答みたいになってましたけど、
基本的にこの方の書く会話って機知に富んでいるし、リズムもいいので読み易いのですよね。
更にはヘタレな大黒のお馬鹿発言もその会話の魅力を増していたと思います。
三人三様の姿を描きながら、異様に纏まりが良いです。
軍の上下関係というととてもお堅そうなのに、どっかユルイ(笑)
のっけから三人の意見がある程度分かれていることにはそれなりに意味があるのかな、
とは思っていたんですけど、まさかそれが結末に関係してくるとは思いませんでした。
いわば、の「気の持ちよう」でまさかこんなに人生変わるなんて思いませんよねぇ。
(こっから完全にネタバレです)
でも実は最後に関してはちょっと納得いってない所が有ります。
いえ、話としてはとても収まりが良く素晴らしいと思うんですけど、
大黒一人の思念によって世界そのものが変容する、という所に若干引っ掛かりを感じたんですね。
勿論、あの世界そのものがまた大黒一人の思念によって生まれた別の世界かも知れず、
そこに現れた知念さんもその大黒の思念に引っ張られた形で生まれてきたという
可能性もあるんですが、でも多分あの世界は『元の世界』が変化したのですよね?
人一人の思念(想念)で世界が丸ごと変容するよりは、寧ろ大黒の記憶を微調整したほうが、
世界に優しくね?とか思ったりしたわけで。だって死者蘇っちゃってますし。
まぁそれ言っちゃったら途中からの降旗さんと知念さんの説思いっきり否定しちゃって、
ある意味作品の結末が全く変わっちゃう訳ですけどね(笑)
あああ。でも降旗さんの最期はちょっぴり泣けました。彼は満足してたんだろうけど。
あんな悟りきった人いないですよ。
でもそこまで突き抜けて無くても、ある程度の理解を示す多分一番「現実派」の知念さんも
好きだし、理屈も何も無くても兎に角自分は生きてる!って自分に言い聞かせてる、
ヘタレな大黒も愛しいです。
うん、三人とも愛すべき人物ですよね。
結末はちょっぴり寂しくも、とてもまとまりが良かったと思います。
はー充実した数日だった。