鋼の錬金術師10巻・感想



鋼の錬金術師 (10) (ガンガンコミックス)

鋼の錬金術師 (10) (ガンガンコミックス)



いやー相変わらずいい仕事してますなぁ。
この作品は何よりテンポがいいのが一番好きですね。
全てのエピソードを詰めて詰めて先に進むので、読者側としては待たされる感覚があんまりないんですよね。
余裕があればここら辺の事についてアニメと対比して書きたい事があるので、後で書こうかな。


さて。話の流れを追いながら感想に入ります。
っと、その前に。
いっつも読んでて思うんですが、この作品には気持ちの良い人間が多いなぁと思います。
善人であっても悪人であっても、行動とそれに伴う理由が明解なところが好きです。
作者自身が人は自分の気持ちに明朗(今一発変換『滅入ろう』って出たよ…Macintosh……)であれ、明解であれと思ってるんでしょうね、多分。
ストレートな生き方っていうのは、色々な障害にぶつかったりであまり器用な人がする事ではない様な気もするけど、生きる事自体に器用になってしまったら結構人生ってつまらないんじゃないかな−ってこれは自分の考えですね、スミマセン。
でもね、あんまり何の転落も経験せず傷も付けられずに生きると、逆に人って強くなれないじゃないですか。
RPGなんかの解りやすいレベルアップではないけど、人は馴れる事を知っているから、逆風や傷を受ければそれに伴って自分自身でなんらかの対処法を身に着けるんですよね。
そういう人間の強さっていうのをすごく信じてるんじゃないかな−って。
あっさり書くつもりが長くなってしまいました。さて今度こそ本編へ。


のっけのリンとアルの会話から。
毎回毎回思うけど本当に伏線の張り方が巧いと思います。
もうラストまで決まっているそうなので、それまでの道筋を辿ればどういう伏線を張れば話が巧く繋がるかは確かに作者なら簡単に思い付きそうですが、実際に読者が混乱しないように、且つどれだけさりげなさを装ってエピソードの中に含めるかというのは、これは本当に作者の技巧だと思います。
あーここに伏線入れとこうって思いつきじゃなく、かなり緻密に計算されている印象を受けます。
さて、グラトニーVSリザ(&曹長)の場面に大佐、エンヴィ−VSランファンにアル&リンが合流。
(ここら辺から腐女子感想混じります。気を付けて下さい)
やっとこさホムンクルスの皆様とロイと愉快な仲間達の御対面ですね。
かなりスムーズに話が進み、上手い事場所移動して軍施設まで誘導。
また一つ大佐達も駒を進める事が出来た、かな。
ラストと大佐の戦いは良かったです。私は周囲の人間程この人にトキメキ(笑)を感じられないのですが、ここは格好良いと思った。
ラストの死に様も格好イイと思いました。やっぱイイ女は引き際(というか散り様)も綺麗なのよね。
さて、ここで珍しく動揺を見せた中尉。
この場面を見て、やっぱりロイアイは私の中では成り立たないなぁと思ってしまいました。(他人が考える分には否定はしませんが)
というのもね、今までのホークアイ中尉見てると、『好きな人』という括りであんな涙まで出るもんかなーと。
まぁ、私の中でもある意味では『好きな人』以上だと思ってるんですけど。
彼をただ信じてついて行く、その背中を絶対に守るって思いが彼女の中にあるのは確かなんですけど、その理由を『好きだから』という言葉で片付けてしまうのは、ちょっと弱いかなぁって。
中尉って、なんらかの形で大佐に救われた過去があるんじゃないかなと思ってます。
忠義っていうより恩義、って感じ? そういう意味でかけがえのない人なのかなぁと。
むしろそれが彼女の生きる理由になるぐらい大切な事だったのなら、戦意喪失も素直に頷けるんです。
ただ単に好きな人が殺されたというだけで弱くなる女性では無い気がする。
ってこれは自分の理想を押し付けてる形なんですけど(笑)
しかもここまで勘繰っといて、本当に単なる恋人だったら爽快に笑い飛ばせますね。


バリーの最期はあっけなかったなぁ。
でも結構重要っぽいトコを短いページで描く、こういう見せ方が好きです。
変に断末魔が激しいとかえぐい描写ある所より、こういう淡々とした死の描写の方が逆にすごく残る気がします、自分の中には。
グリードさんの最期も凄かったですよね。短いページだったけど凄い自己主張の激しい死だった(笑)


あ、グラトニーがラスト好きなのは原作でもそうなんですね。
アニメ版みたいに心神喪失状態になる程では無いみたいですが。
この事は語り出すと長くなるから後にして。ハボック少尉お気に入りなんですが本当にリタイアなのかなぁ。残念。
その後のフェリー曹長とアルの会話なんですけど、個人的に凄く嬉しかった。
随分前に、元・自サイト日記でエドとロイは横に対等に並ぶ事はあっても、向かい合う事は無いと思う、って言ってたんです。(いやまぁ早い話が自分の中にはロイエドエドロイという選択肢は有り得ないっつ−事なんですけど)
そうなんですよ、絶対同族嫌悪すると思うんです、この二人。似通い過ぎてるもの。
自分に本質的に似ていると気付くぐらいにはお互いに相手の事を観察して理解しているだろうし、相手もそういう所気付いてるんだろうな−とか思うと、お互い手の内探るみたいにして自分をどこか誤魔化しながらしか接触出来ない。
本音で素直にドカンってぶつかり難いんですよ、相手に自分の事読まれちゃうのが嫌で(笑)
だから周囲の人には等しく穏やかな顔を見せる事が出来ても、この二人は常にお互いに『どっか気に入らねー』的なものがあると思うの。
でも、両者共に己の信念を貫いている所はちゃんと認めあっているから、そういう意味での人間性に関しては信頼がおけると思うんですよ。
で、更に続けるとこの二人は基本的にナルシストではない。むしろ、下手したら自己嫌悪に陥るタイプじゃないかと。
ただ、くよくよしてる暇は無いって思い込ませて前に突き進んでいるだけで、悩む暇あったらかなり減り込むタイプなんじゃないかなって。
そういう二人がね、デキるっつーのは、私にとっては有り得ないんです(笑)
や、まぁ普通に相手に自分を投影して惚れるタイプのナルシストって普通のナルシストとかとは違って、桁違いに気持ち悪いな−と思うだけで。
(気持ち悪い、というのは自分の腑に落ちないという意味であって嫌悪を感じるという意味ではありません。悪しからず)


話を戻して。
ホーエンハイムは原作ではやっぱりホムクルの皆様のオヤジ様?なのかしら。
そうでなくともかなり近い部分にはいるんだろうなぁ。少なくとも不老であることは確かですし。あと二冊ぐらいコミックス出たら明らかになるかなぁ。
さて、その次。ロス少尉との別れのシーンですね。ここ凄く好きです。
敬礼する二人を見て、自分も軍属である事を思い出し(っていっても良いぐらい結構自覚ないよね、エド)敬礼しようとした所に差し伸べられたロス少尉の手。
普通に握手してのお別れ。別れの台詞も効いてます。
別れた後、フ−さんとの会話で初めて涙を流してるのが、この人らしいなぁ、と。
リザとは違うタイプの、強い女性ですよね。凄く好き。
そして乳とムスク……じゃなかった父と息子の御対面〜。
という気になる所で終わった。相変わらずヒキが上手いですなぁ!
しかも次のページもパンチが効いてるしね!!(←死語)
四コマとカバー下は毎回楽しみにしてます。
今回は『ボイン』ネタが一番好きでした。
でもセレブ鎧が……
セレブ鎧が気持ち悪い!(汗)


アニメと比較して語る部分も作りたかったのですが、ちょっと疲れたのでそれはまた今度。
気合い入れ過ぎたよ……。