ザ花の高尾さん読みきり

の感想の前に。
2/16のトッキュ−感想を書き直しました。
あと2/17に別に『兵悟のさげまん伝説』を書きました。

ちなみに16日のトッキュ感想で書いていた
GOD'S IN HIS HEAVEN, ALL'S RIGHT WITH THE WORLD.
(神は天に居まし、世は全て事もなし)
という言葉はkachiraの大っ嫌いな某文学作品からの引用です。
後の『世は全て事もなし』の方だけがよく使われますね。
実はこの言葉も寧ろ反発を感じたからこそ覚えてる言葉なんですが。

さて。高尾さんの新作読み切りですが面白かったです。ええ、普通に。
この人の短編はなんだかじわりじわりと染み込んでくるような感覚が好きです。
正直てるてるは綺麗な終わり方をしたけれども、納得とか出来ない所もあって、特に千代姉とユーリのエピソードはもっと深く掘り下げて描いて欲しかった。千代姉が松子さんを慕う部分とか。殿は本当にラストあたり可哀想で(ってそれいったら松子さんもなんだけど)、最終回辺り結構きつかったんですよね;
なんか結構重い話をそれとなく解消した所までしか描かれず、完全に明るい方向へと転じる事が無いまま終わってしまったのが、嫌な訳では無いんですけどやっぱり少し悲しかったんです。
人形芝居や、ディアマインを見ていたから、ほっとさせてくれる最終回を迎えてくれるんだろうなぁって、勝手に期待してましたし。
いや、それでも良い終わり方だったんですよ! 悪いとかじゃ無いんです;
ただ私的にもう少し幸せになって欲しかったなぁという希望が捨てられないだけで。
松子さんは、彼女と殿の若かりし頃のエピ出た辺りからすごい愛着が湧いてしまい(しのや才蔵より)、だからもう最後だけは彼女を救ってあげてよぉ〜;という感じでした。
ま、まぁあれにしたって松子さん自身には救いになったのかも知れませんけど……。
真に救われなかったのは残された殿か。

って、てるてるの話してどうするんでしょ。
久し振りのほのぼの恋話で、凄い嬉しかった。
高尾さんの描く恋人達の話だけは『恋愛』、とくに『恋』の話だなぁって思う。
『恋』や『愛』という言葉は淘汰されつつあるけど、高尾作品の中ではこの言葉は今も生きて、色付いているなぁと思うのです。
言葉を安売りしない人だと思うんですよね。
人買い人に買われて性奴隷みたいな扱いをされている内に何故か愛が芽生えて、みたいな(具体的過ぎだよ・笑)なんか勘違いしてる恋愛物(とも呼びたく無い代物)を描いてる人達には是非日本語を学んで欲しいです。
性欲に情が絡むとすぐ愛情だって勘違いするのはどうかと。
元々性欲と愛情なんて完全一致するものでは無いしね。
ってまぁそういう話は置いておいて。
今回の話も別にストーリーとしては淡々としていて、別におおきなヤマもなく、変哲も無い話と言えば確かに何の変哲も無い話。
けれどその中になんとなく揺さぶられる表情とか言葉とかがバラバラと散らばっていて、気付かない内に登場人物に感情移入していたり、なんとなく顔が綻んでしまったり。
絵が上手い人だとは思いません(特にアクション系は何やっているのか解らない事もしばしばでした)が、表情や仕種の描写が丁寧で好きです。
絵の綺麗さとかよりも、一つの話にかならずどこかしらぐぐっと引き寄せられるような言葉や、表情を見せてくれる。
そういう安心感がこの人の作品にはあります。
一話だけ切り取っても面白い、もしくは気になってしまう作品。
ありそうでなかなか無いんですよね。
私にとって高尾さんはそういう作品群を描く、少ない作家さんの中の一人です。
てるてるの単行本最終巻も楽しみだけど、またこういった作品の短編集出して欲しいな。
あーでも人形芝居が読みたい(笑)
嵐と静に飢えてます。二人とも大好きなんだー!