鋼の錬金術師(16)

鋼の錬金術師(16) (ガンガンコミックス)

鋼の錬金術師(16) (ガンガンコミックス)

静と動のバランスが絶妙ですね、相変わらず。
ノックス先生のエピソードは良かった。こういう男泣きにはやられます。
中尉にしても大佐にしてもそうですし、敵方の人間もそうなんですけど、人が死ぬという事、戦争というものがどういうものなのかを把握した上でそれぞれのキャラクターが動いているというイメージが強いです。
それぞれの中にある戦争というもの、またそれに対する彼らの確固たるスタンスが明確に表れているというか。
淡々とした語り口の中にそれははっきりと示されていて、それぞれの視点に立つと単なるお涙頂戴では済まないのだと思い知らされます。
中尉は既に過去の事は割り切り、自分の中で今後どうケジメをつけるかの方向を向いているし、中尉よりもさらに目的が明確のなのが大佐。
彼もやはり自分の行いを『過ち』であると認識して、今は結果的に今後起こるかもしれない悲劇を食い止める為に奔走する事になってはいますが、ひいては彼の当初の目的を達する事とそう大差はないですよね。
要はもう『死なせたくない』のでしょうから。
ノックス先生やマルコーのように前線で人を殺した訳ではない人間の描写も丁寧。
ノックス先生はこれまでにもケガ人はけんかをするなとか、ガキが殺し合いなんかするなとか散々言っている訳ですが、戦地にいた人間の本気の言葉の前には、いかなランファンやメイでも剣を収めざるを得ないですよね。
彼女達は相手の命を奪うのが本来の目的じゃない。自分たちの一族の繁栄こそが目的なんですから。
彼女達の国ではそれが死活問題とはいえ、殺したくなかった人が引きずり出されて殺す立場になったような戦争話を聞かされて、目の前で戦闘をおっ始める事が出来る程、人の心を無視出来る子達でもないでしょう。
親子で味わうコーヒー。ノックス先生がその一杯に涙を流して喜べるほど、悔恨を抱いて己を断罪していたのかと思うと胸が詰まります。
けれど、その一方でキンブリーの様な人間もいる。
でもそういうのが人間ですよね。
この人は『欲』が極端にこちら側に傾いただけで、基本的に普通の人が自分の好きなものに執着する図となんら変わりない。
そういう部分も淡々と、どちらに重きを置くかじゃなくて、こういうのもあればこういうのもある、と提示するだけの見せ方が好き。
いいなぁ、いいなぁ、好きだなぁ。
大佐辺りもそろそろ派手に動きそうですし、アームストロング少佐の姉ちゃん格好良いし!!
というか荒川さんの描く女の人って皆格好良いんですよね。いや、キャラ全員か。
キャラ全員が自分哲学持ってる。自分の生き方を模索して、自分の道を歩もうとしてる。そういうとこが果てしなく格好良い。
先が兎に角楽しみです。