交渉人 真下正義(ネタバレ含)



見る人によってはとても面白い映画なんじゃないかなと思います。
私も途中まではまぁそこそこ楽しんでました。
……が、オチが恐ろしく不満でした。
なんでだろう。なんで犯人に対してあんなに無関心でいられるんだろう。
確かにああいう愉快犯なんて、実際相対したら憎らしいだろうし死んでしまえとか思う事もあるのかも知れない。
でも、やっぱ死人は出しちゃいかんのよ。それが例え犯人であっても。
『こういう訳の解らない手合』の一言で片付けるには、人の命は重過ぎるような気がします。
だからあのEDは物凄く不満。無傷とまでは言わずとも、ちゃんと犯人を確保して欲しかった。
求め過ぎなのかも知れないけれど、私の思う交渉人の仕事は『緊急事態の回避』だけではなく、犯人の身柄をも無事に確保する事だと思っていますので(ってゆーかこれ、絶対あの漫画の影響だ)、あの真下の態度は解せなかった。
交渉人としてだけじゃない。自分という個人に挑戦を挑んでくる相手という者に対して、その者の死に対して、あんなに無関心である事自体が理解出来ない。
他人の心を読み、解しなければならない立場の者が、全くの共感を抱けず、「さっぱりわかりませんでした」とあっさり口にする。
事件は解決しましたが、これでは『交渉人』としての義務を果たしたとは言い難いのでは。
終わり良ければ全て良しでも無いし。
この映画って『《交渉人》 真下正義』じゃないんですよね。
『交渉人 《真下正義》』なんですよね。
別に私は真下個人には興味はない訳ですよ。彼の人となりとか彼女とかどうでも良い訳で、『交渉人』の姿が見たかったのですよ。
けれど、なんか交渉術もそれほど見せてもらった感がないし、何より最悪だったのはユースケ・サンタマリアの滑舌の悪さ!
会話ってのはね、話そう、伝えようって思ってる事を言葉に変えて相手に届ける作業なんですよ? それなのに、その言葉がずるずるしてるのは伝えようという気がないからですよ。(まぁただ単に怠け口なだけかも知れないけれど)
で、こんな『言葉』を粗末にしている人間(この場合は真下)が言葉で相手を説得だなんて、そこから無理がありすぎなんです。滑る言葉には重みも説得力もない。
それでもまぁこれは映画だからと自分を納得させて見ていたのだけど、ラストのあれで脱力しました。
交渉人としてとかじゃなく、刑事として人としても、もっと人の命に対して敏感になろうよ。
どうでもいい命なんて一つもないのに……あの、一瞬後には他人事みたいに話してる真下には正直かなり失望しました。
まぁぶっちゃけて言えばユースケさんはどう頑張ってもスーパーサブが似合う人*1で主役級はやめた方が良いという事が大前提にあったりで、この作品が発表された時点からあまり期待してなかった事もあって、そういう意味では割と楽しめたと思ってます。ラストさえなければ。
あとぬるぬる動くカメラワークはちょっと酔いそうになりました;状況が混乱している風な時に多用されていましたが、視覚的に惑わされる(というか気分が悪くなる)ので出来ればやめて欲しい……。
ところどころに挟んであった小ネタは割と好きです。広報が一頻り笑った後情けない声で「ごめんなさぁい」と言った場面が特に好きでした。
あとSATの方達がチャカチャカ動く図も見てて気持ち良かった。海外の兵士達に比べて体格的にこう…マッチョじゃないでしょう?(笑)その小柄で引き締まった身体の人間達のピシッと統制の取れた動きを見てると、それだけでなんだか非常にほわぁんとなってしまいます。コンパクトに収まる奴らが愛しいんだ!←変なの。←自分で書いててもそう思う。


あと、やっぱり物語の中がクリスマスならクリスマス時期に上映すべきだったかも。
私的にはそんな気にならなかったのですが、同じ回を見ていた人が、「ちょっとタイムリー過ぎるよね」と言ってました。福知山線の事故でしょうね。配慮すべき、との声も上がってるのかな。
でもこの映画、『地下鉄』がメインかと思いきや、あんまりそうでもなかったような。最後の最後でそっちをオトリっぽくしちゃった所為かも知れない。あくまで私見ですが。
あー凄い悪評に見えるかもですが、シャルウィも真下も一応三ツ星くらいですよ。(五個中)
駄目だといっている所以外は良かった、という意味ですから。

*1:注:貶している訳ではありません。名脇役に留めておくべきだ、という意味です