エマ5巻感想(ネタバレあり)

エマ (5) (ビームコミックス)

エマ (5) (ビームコミックス)





…………イイ (*´Д`)


じゃなくて。
ええと、いつも通り、丁寧なタッチで、ゆっくりゆったりとした時間の描き方で、でもそのゆったり空間にもちゃんと起伏があって、ドラマがあって。
……うん、いいです、やっぱ。面白いと思う。
主人公のエマがそうであるように『地味だけど、なんかイイ』作品なんだと思います。
話の主題にしたって、古今東西やり尽くされた感のあるものでしょ。
身分(階級)の差、禁じられた恋、別離、再会。
でも味付けがすごく旨いんですよ。上手いじゃなくて美味しいのね。
なんていうか、素材の調理法を知っている感じ。素材自体はパッとしないのに、それが皿に盛られて来る時には、立派な料理に変わってるって云うか。
その理由の一つは、やはり絵かな、と。
まぁ人物画に関しては多少野暮ったいイメージがあるし好みなんかまっぷたつに別れそうなのだけど、それも慣れれば割と味わい深いものになるし、それ以上に細部迄丁寧に書き込まれた画面が、その世界への感情移入を容易いものに変えてくれます。例え、中世(kaizenai様からナイスツッコミ頂きました。正しくは『19世紀末』です)のヨーロッパの生活がこれとは全く違うものだったとしても、少なくとも浅学な私にはこれがこの世界なんだと納得させられる程の充分な情報量が与えられていると思うんです。
又、当時のヨーロッパについて詳しかったとしても、それとはひと味違った世界を構築したんだと許容出来るぐらいには丁寧に分かりやすく描かれています。
まぁ現実をそのまま再現せずとも、キャラクター達がどういう世相の中で、どういう環境の中で動かされているのかと云う最低条件さえクリアされているのなら、世界観なんて曖昧でも別に良いんじゃないかとも思いますし。
次には、『間』の使い方。
この方の作風でもあるのでしょうけど、テンポの良い漫画に比べたらとても時間の流れ方がゆったりとしています。漫画内だけの話ではなくて、実際のコマ使用数としての話です。
何せ五巻ではエマの着替えだけで四ページ。
エマとウィリアムのハワースでの再会に至っては、エマがウィリアムの姿を認めてから8ページ目にして漸く二人は言葉を交わすのです(その間はエマがウィリアムの元へひた走り抱き着く所をメルダース家の方々に見られると云う、文にするとやたら簡潔に説明出来るシーン)。
でもこの間こそがこの人の最大の武器なんだと思いますよ。
あえて必要無い部分を書き出す事で、その間の登場人物達の感情の動きが浮き彫りになったり。
上記の例で言えば、早く会いたいというエマの思いに反してコマ数が多い。これがエマのもどかしさなんかを象徴してるんだろうなぁとかね。
そしてそこでメルダース家の使用人達にも顔を出させて、これからの伏線にする、と。うーん、ムダがないなぁ。
キャラはね、メルダース夫人が好きです。なんとなくあーやっぱり、って言われそう(笑)
こういうハッキリした物言いの、さっぱり明るい美人はいいですね。
彼女の美女っぷりは初登場時から気になっていました。性格も素敵だしね。
旦那も良い味だしてるし。
オーレリアとリチャード夫妻の話は意外とあっさりでしたね。もうちょっと読みたかった感じ。
特に気になったのはオーレリアがあの家を出てからのリチャードかな。あそこまで自分の思いを言葉にしなくなったのは、絶対にオーレリアさんとの長い別離生活がしこりを作っているからなのだろうけど、もう少しそこら辺り掘り下げて頂きたかった。
とは言えど、本当に満足度高かったです。面白かった。次巻も楽しみに待てます。
次はウィリアムがそろそろ派手に動き出しそうな感じですね。
彼がどこまで『脱ぼっちゃま』出来るかにこの話の行く末がかかっているといっても過言ではないでしょう。
いいなぁ、障害の多い恋。

あ、後書きは相変わらずステキでした。
この後書き見る為だけでもこのコミックス買う価値あるとか思っちゃいますね。
自分ととても似た生き物がいるなぁ、とか思ったり(←おいおい)